アオイふたたび

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アオイふたたび

「もしもしお元気ですか?」 「?」 「あの、こないだお世話になったケーキ屋ですけど」 「?」 「あら、突然のお電話で申し訳ありません。そちらのお電話はヒナタさんで間違いないですか」 「はあ、ヒナタですけどなにか?……もしかしてアオイさんでしたっけ?」 「名前、覚えててくれたんですね」 「まあ。でな、何の用ですか?」 「あなたって今なんかのお仕事していらっしゃいますか?」 「今は、色々あって休んでますけど」 「ちょうどよかった。もし良かったら会ってお話しませんか?」  まさか、単にケーキを一回注文しただけなのに、連絡が来るなんて思わなんだ。ヒナタは呆気に取られた。 「わざわざ仕事のことを聞いてくるなんてどういうつもり?」   ヒナタは脳内にヒナタ村の住人の顔を思い浮かべてバーチャルボイスで相談してみた。  カラスみたいな住人がこう言った。 「なんかそのケーキ屋さん、あやしいでゲスね」  ウサギみたいな住人はカラスにこう言い返した。 「それはあんたが、いつもイタズラばかりしてるから、そういう見方になるだけでは?あのアオイって子は、ヒナタ村長と同年代なんだし仲良くしてみたら?」  老オオカミの風貌をした住人は、重たい口調でこう言った。 「年を取れば新しい友人を築くのも難しくなる。なあに実際に話してみて合わなければまた新しい出会いをもとめればいい話だ。せっかくだし会いなさいよ」  そうね。とヒナタは頷いた。一回だけマルチ詐欺に騙されかけたことがあるので、詐欺みたいな話なら嗅覚が働くはず。  ケーキ屋の店員としてやって来たアオイの雰囲気は決して嫌な感じではなかった。あの嘲笑を除いては、だが。  端から見たらゲームをしているだけに見えるが、実はヒナタの中では二つの軸がせめぎ合っている。 「しゃんと生きるのが大事」と「ゆるりと生きていたい」という二つの軸である。  しゃんと生きつづけるのは、緊張の糸を張って生きるも同然。しかししゃんとしなければ、自分の何かが溶けてしまう。  ヒナタはこうした思案を自分の中でまとめきれなかったが、とにかくアオイには会ってみようと、そんな気になってきた。    
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