◇蒼へと嗣ぐ

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そんな嗣呉とサフィールは所謂バディと呼ばれる関係にある。2人が組んでそろそろ2年となる。 上層の考えとしては、ただでさえ呪符増幅で火力のあるサフィールに呪符上乗の嗣呉を付ける事で更なる火力を持たせ、例え呪符行使がなくとも脅威を与える事を目的として組ませた。勿論、行使する時は徹底的に行使させた。それが広まり、今や嗣呉とサフィールが部隊の最前線に立っているだけで降伏する輩も現れる始末。その方が楽だし平和的ではあるが、サフィールの感情がなくなってしまっている時点で本来はもう遅い。 それでもこの2年で、サフィールの扱いはかなり改善された。以前はただ戦場にひとり置かれて渡されたケースに入った呪符を闇雲に行使し殲滅破壊行動をしていた事が殆どだったが、嗣呉と組む事により嗣呉がサフィールを制御をするようになった。 嗣呉はブースターではあるが、元々は呪符製作者だ。呪符に対してしっかりとした敬意を持っている。だからただサフィールに呪符を持たせ、一方的に攻撃するような上層の振る舞いが気に入らない。 嗣呉が呪符を手掛ける際には、殲滅するのにも破壊するのにも現場や規模、ユーザーに合わせて調整し適正な呪符を構築して使わせる。過不足は限りなく少なくを信条としている。 故に上層がサフィールに対して、無闇矢鱈に呪符を持たせ殲滅破壊する命令を出すのが気に入らない。 幸いと言うべきか上層はサフィールの火力増加を狙い、嗣呉と組ませる打診をして来た。それに対して嗣呉は条件を提示した。 1つ。サフィールが行使する呪符は全て嗣呉が作製する事。 2つ。サフィールに対する命令には必ず嗣呉を通す事。 3つ。嗣呉が納得しない仕事はしないしさせない事。 4つ。それらを飲まないのであれば、今後一切軍部に製作した呪符を渡さない。 脅迫とも取れる内容ではあるが、要はサフィールを運用させる為には何をするにも嗣呉の判断が必要となる形である。 上層的には飲まなくても構わないとの判断もあったが、サフィールで更なる威圧を与えたいと言う目的と、優秀な呪符製作者である嗣呉を手離すのは痛手だと言う判断でそれを受けた。実質『ものは言いよう』で2人にやらせれば良い。言葉巧みにどんな現場も押し付けてしまえば問題はないだろう。 当然嗣呉も上層のそんな考えくらい見通しており、実際の目的はサフィールの傍に付いて呪符の雑な扱いの制御だった。 ただそれもあまり長くは続かなかった。嗣呉が間に入る事により確かに仕事のふるいはかけられたし、以前みたいな何でもサフィールでぶっ飛ばせば良いみたいな案件はなくなった。 その反面、嗣呉も含め2人が高火力な兵器として扱われ行く。まだ20歳である筈のサフィールが、年齢相当の笑顔を見せない理由がわかってしまった。皆が皆、彼等を腫れ物を扱うような態度で接する。ただでさえ呪符の効力を増幅する高火力のサフィールと、そのサフィールを更に底上げ出来る嗣呉。恐怖と畏怖の対象となってしまったのだ。 それもあり当初は呪符に対する敬意での制御のつもりだったが、いつしかサフィールを守る制御へと切り替わって行った。こんな環境のサフィールを心配してしまったのだ。 ──────────────────
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