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「構わないさ。平気だよ。ここからもう何度も会社に行ってる。それより舞花もう少し頑張れば社員になれそうなんだろ。遅番もあるし危ないから舞花が通いやすいところがいい」
駿はいつも私を気遣う。
「ありがとう。嬉しい」
「でも、ここじゃ少し狭いから、この近くでもう少し広いところ探そう」
「うん、探そう」
「じゃあ、また今晩、話そうか」
「うん、今晩ね」
コーヒーを飲み終えた駿はビシっとスーツを着て、通勤鞄にしているリュックを背負った。
玄関で靴を履いたあと振り返り、見送る私と向き合う。
私を抱き寄せ、キスをして、背中をキュッと抱きしめてくれる。背中の真ん中で駿の手を感じる。
キスしていた口を離し「じゃあ、行ってくる」と耳元で囁く。
「うん、行ってらっしゃい。気を付けてね」と応える。
駿がドアを出ると私はドアの隙間から手を振る。駿が階段を降りると、私は急いで部屋を横切りベランダに出て前の道を見下ろす。
駿が自転車で少し進み、止まって振り返る。
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