【序章】

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いつものが始まった······それは薄暗い地下室で兄妹が裸で(たわむ)れる。その光景を父親がビデオカメラで撮影しているのだ。兄妹の父親、ジェームズ・モートンは二年前から自分の子供を金儲けにこうして児童ポルノを撮影していた。昼間は地下鉄の整備士として働く普通の父親だ。 この家族は父子家庭でイングランド、ノッティンガムの郊外に暮らしている。ジェームズの妻は五年前に病気で亡くなり、それからは男手ひとつで子育てをしてきた······しかし、何処かで悪い知恵をつけられたのか犯罪に手を染めてしまったのだ。 兄はマーク・モートン、14歳。ダークブラウンの髪にヘーゼル色の瞳のまだあどけなさが残る少年だ。しかしこの地下室で行われていることは彼には十分理解できる年齢で、だからと言って父親に逆らうことはしなかった······子供に手を挙げるような父親ではないがこの家庭ではジェームズが言うことは絶対なのだ。 そして妹のイヴ・モートンは9歳、兄のマークより明るめのミルクティーベージュの髪に透き通るような青い瞳をしている。マークとは違いイヴは兄と遊び、それを父親が撮影しているだけだと思っているのだ。ジェームズは兄妹に性的なことをさせている訳ではなく、全裸で遊んでいるのを撮影している。しかしジェームズはマークにだけたまにイヴにキスをしたり、まだ膨らみのない胸を触ったりすることを要求した。 「さぁ二人共、もう終わったから服を着なさい」 ジェームズはそう話すとビデオカメラを手に持ったまま先に階段を上がり地下室を後にした。 「イヴ、服を着て」 「もっとお兄ちゃんと遊びたいな」 イヴは裸のまま無邪気な様子で話すのでマークは早く服を着せてあげたくなり、白い肌着をマークが着させる。それはまるで母親がお風呂上がりの子供に服を着せてあげるような感じだ。 「ここで遊ぶとお兄ちゃんのいつもね」 イヴはマークの下半身を指差す。彼は咄嗟に自分のブリーフパンツを履いた。妹とはいえ、裸でキスや胸を触っていれば反応もしてしまうだろう······ましてやマークは思春期の男の子だ。 「ほら、服着たら上に戻ろう」 「うん!」 何も知らないイヴが不憫(ふびん)に思えてきた···自分もこんなことなんてしたくはないが、イヴは遊びだと思って父親に騙されている。マークのように分かる年齢(とし)になった時、彼女はどれだけ傷付くだろうかーーーー
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