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笑顔だったイヴが急に悲しそうな表情を浮かべた······しかしマークは彼女を優しく抱きしめ、
「元気でな、イヴ···」と、笑顔で送り出した。
「お兄ちゃんも元気でね···」
イヴは再び笑顔に戻った。そして、クリスが最後にマークとハグを交わした。
「それじゃあ行こうか···イヴ」
クリスが彼女の手をとるとイヴはマークに手を振って、二人は部屋の入口で待っている両親の元へと去っていった······
“さようなら···イヴ”
マークは心の中で彼女に別れを告げたーーーー
「さぁ、今日から此処がイヴちゃんの家よ」
ローレンス家に来るのは初めてではない、たまにマークに連れて来てもらっていた。まさか此処が自分の家になるとは彼女は思ってもいなかった。エドガー・ローレンスは大手不動産会社の専務取締役をしておりモートン家に比べれば裕福な家庭の方だ。
二階のクリスの部屋の隣が彼女の部屋で用意されていた。ベッドカバーやカーテン等、女の子らしい色使いに勉強机や一通りの家具も揃っており、部屋の隅には人形がたくさん置かれていた。
「イヴちゃん、無理にとは言わないけどおばさんのこと“ママ”って呼んでくれると嬉しいわ」
「ママ···」
彼女は養護施設を出てから少し緊張していたのか表情が固かったが、やっと笑みを浮かべた。
「ありがとう···イヴ」
キャサリンは彼女をギュッと強く抱きしめた······イヴには母親の記憶がなく、これが初めて感じる母親の温もりだった。
キャサリンがクローゼットにモートン家で纏めてきたイヴの学校の制服や私服をしまっているとクリスチャンがやって来た。
「何か手伝うことある?」
「あらあら、普段はお手伝いなんてしないのに」
キャサリンはくすくす笑っている。
「此処はいいからイヴちゃんと遊んでなさい」
「それじゃあイヴ、庭のブランコで遊ぼうか」
「うん!」
クリスとイヴは部屋を出て、家の外庭へと向かった。
ローレンス邸の庭はしっかりと手入れがされており定期的に庭師が来ていたり、キャサリン自身がガーデニングを趣味としている。ホリホックがそろそろ咲頃になっており、他にも色とりどりの花々や緑が美しく咲いている。ガーデンテーブルチェアにガーデンブランコも置かれており、イングリッシュガーデンのお手本のような庭だ。
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