act.3

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   空港ターミナル直結の駐車場に滑り込み、今起きた出来事を反芻する。  体中の立毛筋が収縮し鳥肌が凄い。産毛が立ち上がって⋯⋯俺が猫なら、いやネコではあるが、いやいや違う兎に角、今の俺はびっくりしてシャーッ!!って毛を逆立てた猫状態なんだろう。アドレナリンが噴き出しているんだろう。  全身が心臓になったんじゃないかってくらいバクバクする─────  高校時代の同級生で  自覚する限り初恋であろう存在で  離れても、会えなくても、少しも忘れられなかった俺の『永遠』  思い出に浸り踞るだけじゃなく、ちゃんと踏ん切りをつけて前を向くんだと決意した矢先になんなんだ。  ─────⋯⋯  ─────⋯⋯  ─────⋯⋯⋯⋯勇魚がいた  俺の名前を呼んだ  どうしよう  どうしよう  どうしたらいいんだ。どうするのが正解だ。  頭の中がぐるぐるし過ぎて汗までダラダラ出て来た。熱い。凄く熱い。きっと俺の顔はトマトのように赤いに違いない。目も血走っているに違いない。  怖くて外に出られない。空港の中になんてとても入れない。どうしよう。  などとジタジタしていたらスマホから黒電話のけたたましい音が鳴り響いた。更に心拍が跳ね上がり、死ぬかと思った。  “母”  うわ母だ! そうだ俺は母を迎えに来たんだった! [いっちゃん何処にいるの〜?] 「駐車場! 母さんは?」 [北出口だよ〜] 「すぐに車回すから待ってて!」  取り敢えず深呼吸してみよう。心を落ち着けよう。車内も空気を入れ替えよう。いっぱい酸素を取り込み、平常心を取り戻すんだ俺。  
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