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act.4
睡眠不足、身体的疲労、ついでにアドレナリン分泌過多(推定)が引き起こした心的疲労が重なり泥のように寝た。実家でここまで寝たのは十八で家を出て以来初めてではなかろうか。
「兄ちゃん、疲れてんのは解るけど流石に寝過ぎじゃね」
「俺も俺に昼まで寝る体力があるとは思わんかったわ⋯⋯」
睡眠にも体力が要る。若者は体力があるからこそ十時間とか十二時間とかぶっ通しでも寝られるのだ。今の俺には六時間が限界だ。職業柄、普段から無理な姿勢を保持して治療にあたる事も多いせいか特に腰や背中が重怠くなって目が覚める。
いや、腰が重怠いのは俺がネコのせいなのも無きにしも非ずだが。
それゆえに遊ぶタイミングは絞って来た。節度を保って来た。自堕落には生きない、それもまた選択野良の矜持だから。
「奎二、なんか服貸して」
「着の身着のまま来てくれたもんなー。部屋から適当に持ってっていいよー」
「靴も。履いて来た革靴しかないのよ」
「サイズ合うならスニーカーでもスリッパでも適当にどーぞ。あ、スクラブ(※医療用ウェア)もサンプルだモニターだって貰ったやついっぱいあるから使って。父さんて歯科医師会の刺繍入り白衣しか着ない人だからさー」
「さんきゅー」
─────⋯⋯イオンへ行かねば。
母が出してくれたパンツ(下着)が新品なのは有り難かったが父も弟も前開きトランクス派とは。まさかあの二人、今時立ったまま用を足すのか。いや、一緒に住んでいる訳でもない俺がとやかく言うのも筋違いだからそれはいいとして。
とにかく下半身が落ち着かない。ウエストのゴワゴワ感、尻まわりや鼠蹊部を始めとする全体的なパカパカ感が堪らなく不安だ。今の俺はボクサーパンツのスマート且つソフトな締めつけがないと安らげない体なのだ。向こう半月このままなんて耐えられない。
何はなくともおパンツ購入を急げ。
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