act.4

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   が。そんなものは杞憂だった。まっっ! たくの杞憂だった。 「一誠!」  コーヒーとニューヨークチーズケーキを買おうと立ち寄ったスタバには勇魚がいた。可愛らしさを全身で表現する女の子と二人で。 「会うとなったらマジ会うな! スゲー偶然!」 「お友達?」 「高校の同級生! 歯医者さん!」 「なぁくんの友達に賢い人いたんだ〜! 意外〜〜!」  なぁくん?? いさなのか? 三十越えたおっさんを『なぁくん』呼びとはスゲーな。俺だったら絶対嫌だわ。でもうちの母も未だに『いっちゃん』呼びだしアリなのか。まあ当人がいいならどうでもいい。 「みーなです♡ いつもなぁくんがお世話になってます〜♡」 「⋯⋯⋯⋯こちらこそ♡」  前から思っていたけどこの妻目線的な挨拶ってどうなんだろう。いち恋人がするものなのか。それとも婚約済みで結婚まで秒読みとかそんなんなのか。年齢的にもそのセンが濃厚なのか。  でもみーなちゃんはお若そう。このグイグイ来る感じにとっても若さを感じる。一般的に男とは若くて可愛い女の子が好きなんだろうけど俺には解りません。  ハイライトで強調した(ニセの)涙袋、垂れ目風のアイライン、花魁のような赤いアイシャドウ⋯⋯勇魚の好みが地雷系女子とはこっちこそ意外ですわー。  今から映画鑑賞ですか。ワイルドスピードですか。ほうほうそれはそれは。 「奥歯な! もう全然痛くないの! やっぱプロの技ってスゲーな!」 「(ほぼ何もしてないけど)そりゃー良かった」 「一誠は? 買い物?」 「うん」 「付き合おうか?」 「アホか何でだよ。ワイスピ面白いらしいなーまた感想教えてー」 「わかった!」 「また明日な」って笑顔で挨拶して。  彼女をエスコートする勇魚はそれでもやっぱり無邪気で天真爛漫な勇魚らしく、エスカレーターを上がっていく間にも俺に向かってブンブン手を振っていた。俺も営業スマイルでそれを見送った。  これが─────  これが現実。
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