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act.5
「あーらー! 若先生ったらハンサムねえ!」
「お褒めに与り恐縮です♡」
「大口開けるの恥ずかしいわあ♡それで院長先生はどうなの??」
女性との会話に於いて、特に話題を膨らませる能力には常日頃から感心しきりだが、所変わってもやはり同じ。高齢男性が比較的気難しいのもどこも同じかな。
「フィットチェッカーは⋯⋯」
「はい」
「青の咬合紙を⋯⋯」
「はい」
吉本さんは絶妙にアシストしてくださる。ゆずりはの井口さんも長いお付き合いで俺の呼吸をご存知だが、初日からそれに匹敵する程の気遣い、仕事ぶりが素晴らしい。感謝です。
「どうでしょう、どこか当たってませんか?」
「んーん! 若先生、上手! 院長先生より巧いんじゃないの?」
「そうなれたらいいんですけど。もし噛みにくかったり痛みが出るようなら仰ってくださいね。何回でも調整しますから」
「アラ! そんな事言われたら何にもなくても予約入れちゃうわよ〜!」
「ハハハ」
院長不在でご不便をお掛けします、と入れ歯洗浄剤(試供品)をお渡しするととっても喜んで頂けた。つか親父。いくら腐るモノじゃないとは言え折角メーカーさんが提供してくれたんだから配れ。取り敢えず配っとけ。何でもかんでも倉庫に放り込みっぱなしにするんじゃない。
「先生、お年寄り受けいいですねえ」
「お子様受けもいいですよー」
「午後はお子様三連続です」
「頑張ります」
午前は衛生士さんお一人で定期検診の患者さんを担当。俺はほぼ義歯調整。入れ歯をカパッと外し、削ったり足したり磨いたりしてカコッと戻すの繰り返し。
今のところは問題なし。順調かな。
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