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日常
何の変哲もなく平坦なその日々が崩れたのは本当に突然だった。
高校三年になったばかり、十七才の俺と勇魚は唐突に離れる事になった。
勇魚の自慢のお父さん、パイロットのお父さんが休暇中の飛行機事故で亡くなったんだ。
「父ちゃん、フライト10,000時間越えのベテランだったんだぜー」
「うん」
「20,000時間まで飛び続けるって言ってたんだぜー」
「うん」
「それがさー⋯⋯小型機で観光中に墜落とかマジ笑えん……アリゾナってどこよ……」
「うん⋯⋯」
「母ちゃん以外の女のひとと一緒に死ぬとかマジ⋯⋯笑えん」
「⋯⋯⋯⋯」
勇魚の両親はとても仲がいいと聞いていた。勇魚のお母さんは俺にも優しかった。よくオムライスを作ってくれた。ケチャップで『いっせい』『いさな』って書いて出してくれるような、明るくてお茶目で可愛らしいお母さんだった。勇魚の家のリビングには家族の写真がいっぱい飾ってあった。
どうして
どうして
赤の他人の俺でもそう思う。まして勇魚や勇魚のお母さんは。
慰める言葉なんて─────ひとつも出てこなかった。
勇魚がこの町から祖父母のいる遠方へ引っ越す事にも、何も言える訳がなかった。
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