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今、世界は阿鼻叫喚の巷と化している。
信じられるものは自分だけ。
他の者は全て、誰であろうと敵だ。
天使であろうが悪魔であろうが、出会った者と戦い合い、殺し合う。
するとここでは、負けた者の能力が、勝利者に受け継がれる仕組みになっている。
その力は水を操る能力だったり、炎を出現させる能力だったり。
全てを氷に変える能力だったり、大地を揺さぶる能力だったり。
時間を動かす能力であったりする。
能力をもつ神々全員が、戦に参加している。
お互いに食いあっているわけで、早い話がとも食いだ。
誰が一番最初に始めたのかは知らないが、この気違いじみた戦いを続けていれば、神々に待っているのは自滅でしかない。
──そのことに気づいているのは私だけだろうか……?
私は悔しさに唇を噛んだ。
こんな戦は嫌だった。
しかし世界中に広がった、この戦を止める方法が分からない。
能力を強者に奪いとられた亡骸の数は、すでに膨大なはずだ。
最後に頂点に行きついた者の体には、亡くなった者全員のエネルギーが、注ぎ込まれることになる。
それは濃厚に凝縮された力のはずだ。
万能であり、無敵になる。
その者こそ全宇宙の支配者であり──戦うこともない。
そのときになって、やっと永遠の平和がやってくる。
血みどろの勝者は一人だけだ。
それがラグナレク。あるいは運命……。
見上げた空も熱い朱色に染まっていた。
自分の両手もふと見ると、他人の血で赤い。
闇はひたひたと私の後を追いかける……。
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