1 戦天使アリエス

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 今、世界は阿鼻叫喚の巷と化している。  信じられるものは自分だけ。  他の者は全て、誰であろうと敵だ。  天使であろうが悪魔であろうが、出会った者と戦い合い、殺し合う。  するとここでは、負けた者の能力が、勝利者に受け継がれる仕組みになっている。  その力は水を操る能力だったり、炎を出現させる能力だったり。  全てを氷に変える能力だったり、大地を揺さぶる能力だったり。  時間を動かす能力であったりする。  能力をもつ神々全員が、戦に参加している。  お互いに食いあっているわけで、早い話がとも食いだ。  誰が一番最初に始めたのかは知らないが、この気違いじみた戦いを続けていれば、神々に待っているのは自滅でしかない。 ──そのことに気づいているのは私だけだろうか……?  私は悔しさに唇を噛んだ。  こんな戦は嫌だった。  しかし世界中に広がった、この戦を止める方法が分からない。  能力を強者に奪いとられた亡骸の数は、すでに膨大なはずだ。  最後に頂点に行きついた者の体には、亡くなった者全員のエネルギーが、注ぎ込まれることになる。  それは濃厚に凝縮された力のはずだ。  万能であり、無敵になる。  その者こそ全宇宙の支配者であり──戦うこともない。    そのときになって、やっと永遠の平和がやってくる。  血みどろの勝者は一人だけだ。  それがラグナレク。あるいは運命……。  見上げた空も熱い朱色に染まっていた。  自分の両手もふと見ると、他人の血で赤い。  闇はひたひたと私の後を追いかける……。
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