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草原を歩き、大きな木の側についた。
それはとねりこの木の巨木だった。
木は太い幹に、四方に枝を伸ばし、緑の葉を茂らせている。
その木陰に入り、やっと私は一息ついた。
昔はこんな世界ではなかった。はずだ。
明るい笑い声……純白の神殿。友だち。豊かな光の世界があった。
幼い頃の記憶が、途切れつつも断片的に脳裏に浮かんでは消える。
こんな思考が出てくるのは、つい先程「過去」の力を持つ女神と戦ったせいだろうか……。
だから私の過去の記憶が蘇って……?
ずっと昔。
私がまだ子供だった頃は、世界はもっと平和だった。
純白の神殿には私ととても仲の良かった天使が住んでいた。
私達は二人でよく遊んで、一緒に成長して……。
その子の名前は確かルシフェルで……。
彼は──あの子は私の名前をどのように呼んでいたっけ……?
「アリエス!」
ふいに、私の頭の中の声と同時に、木の影から……彼の懐かしい声が……した。
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