1#なのというウサギ

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 『なの』は、ネザーランドドワーフ種の『元』飼いウサギだ。  そう。この雌ウサギは『元』飼いウサギなのである。  更には、ペットショップの片隅で子ウサギの頃からたった1匹だけで売られていた処遇だった。そう。たった1匹で。  「寂しいわ・・・寂しいわ・・・もう死にそう・・・」  ストレスで目を充血させ、展示ゲージに敷かれた新聞紙をビリビリに歯や爪で引きちぎり、ジタバタとのたうち回っている毎日。  「寂しいわ・・・寂しいわ・・・もうダメだわ・・・もう耐えきれないわ・・・」  ボロボロの展示ゲージの中でなのは孤独死を覚悟していた矢先の事、  「な、何?今さっきからわたしをジロジロと指くわえて見ている人間は・・・?」  なのは、展示ゲージの目の前のギョロギョロした目で客に見詰められた視線に思わずたじろいだ。  ・・・もしかしてら・・・わたし、この人に買われるかも・・・?  なのはこの独りぼっちのゲージから逭れられるんじゃないか?という淡い期待にワクワクした。  「このネザーランドドワーフ。可愛いな。店員さーーーん!!このネザーランドドワーフのウサギくださーーーい!!」  ・・・やっぱり・・・!!  ・・・やっっっと、この退屈と孤独から逃れられる・・・!!  ・・・ありがとう!!お客さん・・・!!  人間の客に買われたネザーランドドワーフのなのは、無造作に入れられた空気穴の開けられた狭い段ボールの中で、これから始まるであろう新たな日々にワクワクした。  しかし、その期待は脆くも崩れ去った・・・  「あのぉ・・・わたし・・・お腹空いた・・・」  この飼い主ときたら、ネザーランドドワーフのなのの世話なんか全くせずに、ゲージの中でずーーーっと放置していたのだ。  「お腹空いた!!お腹空いた!!お腹空いた!!お腹空いた!!」  ガンっ!!  余りの空腹に発狂したネザーランドドワーフのなのは、ゲージを後ろ足で蹴り飛ばした。  すると、ずーーっと糞まみれで劣化したゲージの金網が外れた。  「やっと!!やっと!!わたしは自由の身になったわぁーーーー!!  ・・・って、ここは何処?!」  小汚ないゲージから脱出したネザーランドドワーフウサギのなのは、辺りを見渡して呆然とした、  見渡す限りの木、林、そして森!!  鬱蒼とした山林の真っ只中に、あかりは産まれてから見たことの無い光景に立ちすくんだ。  「本当にここは何処だよぉーーーーーーーーー!!!!!」  
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