第1章 再会~鶴岡side~

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第1章 再会~鶴岡side~

 大学を卒業して2年目の春。  念願叶って高校の教員採用試験に合格し、今日から高校の国語教師。  俺、鶴岡聡(つるおかさとし)は1年間講師を続けながら、試験のために勉強もしてきた。その甲斐あってか、都内でもかなり有名な進学校への赴任が決まって緊張していた。  元々、自分は頭がいい方だと過信していた。しかし、大学卒業後にすぐ教員になった同期は自分より不真面目で、成績だって良くない人間ばかりだった。そこで、頭が良いだけではダメなんだと学んだ。と、同時に自分のプライドはズタズタにされた。  そこからは、講師として日々学んだ。自分に何が足りなかったのかを探求し、あまり得意としていない他者とのコミュニケーションも取るように努めた。現役の先生とは勿論、生徒とも積極的に話すようにした。  そうすることで生徒がどんなことで躓いているのか、どう教えればもっと伝わりやすくなるのかを考えるきっかけになった。  良い職場に巡り合えたおかげもあって、ここ1年で自分は急速に成長できた。ベテランの先生からも『来年度からは絶対に教員として働けるよ。鶴岡君すごく頑張ってたからね。』と言われてすごく嬉しかったのを昨日のことのように覚えている。  そうして、俺は無事試験にも合格してこんな立派な高校に今日から勤めることになった。  大きな校舎を見上げながらそんな1年間の思い出を振り返る。…ただ今日からは進学校の一教員。もっと気を引き締めていかなければならない。  少し曲がったネクタイを直し、俺は職員室へと向かった。 「おはようございます。」  元気よく挨拶をし、職員室へ入ると教頭が出迎えてくれた。結構早く到着したためか、来ていない先生の方が多い。 「おはよう、今日からよろしく頼むね。鶴岡先生。」 「はい!よろしくお願いします!」  4月からの赴任がここ、江戸前高校に決まってからは打合せ等で何度も訪れており、職員の名前はほとんど把握していたし、生徒が帰った後にも校舎の中を見学させてもらっていたが…やはり慣れないものはまだ慣れない。自分が思ったよりも緊張していることに改めて気付かされた。  3月中にどこの学年をもつのかも聞かされており、それもあってか余計緊張していた。 「校長先生もすでに出勤してるから、先に挨拶しておいで。始業式と新任式の流れは他の先生たちが来てから最終確認を行うから。」 「はい、では失礼します。」
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