第1章 再会~鶴岡side~

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「おー、美味い…!これはリピ確定だなぁ。また買いに行こ…。」  そう呟きながら、生徒名簿を見ていく。副担ということもあり、3ー5は念入りにチェックした。  生徒名簿を見終わったら明日の最終確認。まぁ、遅くなるのも良くないなと思った俺は軽く確認するだけにして、寝支度を済ませ眠りについた。  朝、学校へ着くとすでに香椎先生が出勤していた。 「おはようございます、香椎先生。」 「あ、おはようございます!鶴岡先生。いよいよ今日から授業始まりますね…!」 「ですね。緊張しますけど、お互い頑張りましょう。」 「はい!」  お互いに意気込んで、俺は3年生の教室へと向かう。今日の授業は1時限目が副担である5、3時限目に6、4時限目に4組となっている。  たまに午後の授業も入ったりするが、基本的に国語の授業は午前で終わるため、午後は空き時間となる。…まぁ、部活の顧問も任されているから、仕事は放課後までには終わらせたいところだ。  朝のHRを5組で行い、そのまま俺の授業。授業自体は何の問題もなく終えることができた。生徒たちの反応は悪くなかったし、やはり頭の良い高校なだけあって理解力がある。嚙み砕いて説明しなくても生徒の大半には伝わる。  それは、現文でも古典でも変わらなかった。5組で現文を教え、6組で古典を教えた俺はそう感じた。  そして、問題の4組だ。 「日直、挨拶よろしく。」  俺がクラスに入る前にはすでに全員座っていたようで、そう声を掛けるとすぐに挨拶をし、授業が始まった。  そして、嫌でも目に入るあの整った顔は、廊下側の後ろの席に見つけた。…今日も相変わらず俺をじっと見つめている。何なら、少し微笑んでも見える。 「教科書、7ページから早速やっていくぞー。」  淡々と授業は進めていくものの、どうしても気になる視線。気にしないように、と努めてもそこですでに意識しているのは自分でも自覚があった。 「じゃあこの問題解いてみろー、時間は5分。」  と言って、教室内を巡回する。そこで、楠木の横を通りかかった時に声を掛けられた。 「先生」 「…っ、どうした?質問か?」 「ここの現代語訳なんですけど…」  と言うからノートが見える位置まで屈んで覗き込んだ時に、俺には見えてしまった。 『好きです、鶴岡先生』  そう、ノートの端に書かれていた。  は!?と思い、楠木の顔をバッと見ると、気付いたことが嬉しかったのかニコニコと微笑んでいた。  コイツ…授業中なのわかってるのか?と思いながら訳を見ると、すでに完璧に書かれており、思わず舌打ちをしそうになった。
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