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そうだ、きっと揶揄っているんだろう。俺が新米の教師だからと、きっと試しているのだ。その手には乗らない。
俺はそう意気込んで、振り返りと明日の準備に取り掛かった。
午後の授業が終わり、俺の仕事も大分片付いた。そして、放課後は部活の顧問の仕事が待っている。…つくづく思うが、放課後に部活の仕事まであるのはしんどいなと思う。まぁ、自分が希望したバドミントン部の顧問だからまだマシか。
勿論、部の顧問なんてずっといるわけでもないが、せっかく学生時代にやっていたからこそ、教えられることがあれば教えたい。…まぁ、新参者にあれこれ口出されるのは嫌だろうから、細かいことは言わないでおくが。
とりあえず今日は顔合わせ、ということで部活が始まる時間に合わせて体育館へ向かった。
「整列ー!」
俺が来ると、すでに集まっていた生徒たちがキャプテンの声掛けで俺の周りに集まった。
「「よろしくお願いします!」」
「よろしく。とりあえず自己紹介からさせてくれ。鶴岡だ。3年の国語科を担当している。基本的には君たちの今までやってきたトレーニングなどに口を出すつもりはないが、サボりは見逃さないぞー。一応、これでも学生時代はバド部に所属してたんでね。…じゃあ簡単に君らも自己紹介してくれる?」
「はい!男子バド部キャプテンの桐谷です。シングルスやってます。」
「副キャプテンの…」
と、自己紹介タイムが始まった。正直、今聞いたからといって全員覚えられるわけではないが、聞いておくにこしたことはない。
最後の一人が終わり、いつも通りの練習に入るように声掛ける。今日は初めてではあるため、最後まで練習を見るようにした。
練習自体は可もなく不可もなく、といった様子だった。元々、進学校であるため、部活にはそこまで力を入れていないのだろう。ただ、キャプテンや副キャプテンはさすがの上手さというか…、任されているだけあって人一倍真面目にやっているという印象だった。
「来週からは1年生の仮入部期間も始まるから、忙しくはなると思うけど、キャプテンを中心に頑張ってな。それでは今日の練習は終わりだ。」
「「ありがとうございました!」」
生徒たちが帰り、戸締り確認をしていると、すでに20時を回っていることに気付く。
「早く帰りてぇ…」
「お仕事、お疲れ様です。」
「…え?」
聞こえるはずのない声が聞こえ、慌てて後ろを振り向いた先には、楠木が立っていた。
「楠木…お前、どうしてここに…」
「何って…俺も部活終わったところですよ。…あぁ、鶴岡先生バド部顧問だったなんて…あと半年だけでもバド部に入部しようかな。」
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