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そんなバカげたことを言う楠木に対して、疲れもあってかイライラさせられる。冗談なのはわかっているが、どうしてこんなに俺に付き纏うのだろう。…まだ、2日目だぞ?
「何言ってんだ。今まで続けてきた部活やればいいだろ。何部だ?」
「サッカーです。…でも、バド部の奴ら羨ましすぎる。放課後も鶴岡先生と一緒にいられるなんて…。」
「…楠木さ。冗談でもそんな事言うんじゃないよ。俺だからまだいいものの…揶揄うのも大概にしときな。」
そう忠告しただけなのに、楠木の顔がぐにゃりと歪み、鋭い目つきで睨み付けられる。
「…俺が、揶揄ってると思ってるんですか?」
低く、怒ったような口調。楠木から発せられたとは思えない声だった。
徐々に近付いてくる楠木に対し、身の危険を感じ後ずさりをする俺。トンと壁に背中が当たり、慌てて横にずれようとする俺を腕で阻止した楠木。
…所謂、壁ドンというやつだ。
「だ…だって、そうだろ?俺は楠木とは初対面だし、俺とお前は教師と生徒。まず揶揄われてるんじゃないかって思うのが普通だろっ…」
「…先生は、一生徒のこと信用してくれないんですね。」
「なっ…お前が変なこと言うからだろ!普通に接してくれたら信じるさ!」
「…普通に?俺がどれだけ貴方と会えるのを心待ちにしていたと思って…」
ブツブツと言う楠木の声が聞こえず、ん?と思い少し顔を近付けたその瞬間…。
あ、喰われる…。
そう思った時には、時すでに遅し。
俺は、楠木にキスをされていた。
「んっ…おま…やめっ!」
抵抗しようと、口を開けたのが悪かったのか、そのままぬるりと楠木の舌が入ってきた。
ドンドンと楠木の胸を叩くが、一向に離れる気配が見られない。寧ろ、俺の逃げる舌を捕まえようと躍起になり、縦横無尽に俺の口内を駆け巡る。
鼻で息をすることも忘れ、どんどん苦しくなってくる。
このままじゃいけない…そう思った俺は思いっきり楠木の肩を掴んで無理矢理引き剥がした。
「はぁ…、はぁ…お前っ、何してんだ…」
ゴシゴシと服の袖で唇を拭い、荒い息を何とか整えながら楠木を睨みつけた。
「何って…キスです。俺が、本気だってこと…少しは分かってもらえましたか?」
お互いの唾液で濡れたであろう唇をペロリと舐めた楠木。ほんの少し、頬が紅く色付いている。
「お前な…、こんな無理矢理して、俺がお前のこと好きになるとでも思ってんのか!?」
近くに誰もいないことを確認して、少し声を荒げてみせた。実際、今は楠木に対して最悪な印象を抱いている。顔が良いからって、何をしても許されるとでも思っているのか?
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