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第2章 接近~楠木side~
つるの生まれ変わりである鶴岡聡先生がこの高校に来てから、すでに1週間が経とうとしていた。
俺にとっては感動的な再会…。今でも、あの時の衝撃は忘れない。
正直なことを言うと、例え出逢えたとしてもつるの生まれ変わりだ、なんて気付けないんじゃないかと思っていた。
でも、そんな事はなかった。
あの、壇上に立った瞬間、一目見ただけで「あ、つるだ」と思ったのだから。
勿論、見た目も性別も年齢も…何もかもが違った。
だけど、俺の中に芽生えた気持ちは、懐かしさと愛しさ。そして、諦めないで良かったという安堵感…そんな感情たちだった。
そう思ったら居ても立っても居られず、即行動に移していた。初対面なのに好きだと宣言したせいで、警戒はされてしまったが、生徒だから無下にはできないはず…。そう思って、思わずキスまでしてしまった。
…流石に反省はしているが、でもだからといってアプローチをやめるつもりは微塵もなかった。
嫌われない程度に、無視されない程度に…そうやって虎視眈々と、先生を落とすことだけ考えていた。
ただ、問題が一つ…大問題を抱えている。
それは、1日に1度…良くても2度しか一緒の空間にいれないことだ。
クラス担であっても、教科ごとに教師が変わるため、朝と帰り、そしてそのクラス担の教科でない限りは姿を見ないことが多い。俺の担任は体育のため、日によっては体育がそもそもないこともある。
その点、毎日必ずある現文と古典は優秀だ。曜日によってはどちらもあることもあるが、基本は1日1回。…足りるわけがない。
そこで、昼時や放課後、ちょっとした空き時間に先生を探しているが、ほとんど見つからない。…というか、授業以外では関わらないようにと避けられているような気がする。
放課後はどこにいるかは明白なため、1番会いやすい時間帯ではあるが、何しろ俺は校庭で先生は体育館。会いに行こうと思っても、今はお互いに新入生の仮入部期間で忙しい。
…正直、抜け出して会いに行きたいところだが、キャプテンを務めている俺にとってはなかなか厳しいのだ。
「…お前、キャプテン代わりにやってくれよ。」
「何言ってんだ。想以外にキャプテンが務まる奴いないだろ。このモテ男め!」
副キャプテンの池谷に意味の分からないキレ方をされ、はぁ…と溜息をつく。
俺は誰彼構わずモテたいわけじゃない。先生にモテなきゃ意味がないんだよ。
「あの、楠木先輩!」
そう物思いに耽っているところで女子マネで見学に来た1年生が声を掛けてきた。
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