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「どうかした?」
「あのっ、先輩って彼女いるんですか?」
そう頬を赤らめて聞いてくる後輩に対して、部活を何だと思っているんだと呆れて溜息が出た。
「それ聞いて、何になるの?いなかったら、サッカー部のマネやるの?」
「あ、いや…その…。」
「悪いけど、そんな不純な動機でマネージャーやられてもこっちが迷惑だよ。うちの2・3年のマネは少なくともそんな不純な動機でやってないからね。恋愛したいのなら他の部活をお勧めするよ。」
確かに部員と付き合っているマネもいないことはない。だが、場は弁えているし、元々部活に対して真面目な女子が多いのだ。手際も良く、頼りになる存在だ。
「…っ、失礼しますっ…!」
そう言って逃げ帰る後輩女子を呆れた目で見送りながら、ハッと気付く。…そう言えば俺も先生に同じようなことを言ったな、と。先生が顧問なら、バド部に入部しようかな…なんて。
「…俺も大概だな。」
そう言ってフッと笑ったところに、聞き慣れた声が届いた。
「あーあ、あの子可哀想に。」
「中西。いたのか。」
「いたわよ。…楠木って優しそうに見えて案外ズバッと言うところあるわよね。」
声を掛けてきたのは中西。女子マネの3年で、仕事ができる女。顔は美人だが思ったことをズバッと言う性格がキツイのか、彼氏ができても長く続かないと言われている。
「期待して夢見るより、最初から夢なんて見ない方がいいだろ。…それも優しさだと、俺は思うし。」
「…まぁ、そうね。ところで、楠木の好きな人って実在する人?またうちのクラスの女子が『好きな人いるからって振られた』って話してたんだけど。」
面倒くさそうにそう話す中西。そんな様子なら別に聞かなければいいのに。
「実在するに決まってるだろ。何、そんなに嘘くさい?」
…まぁ、実在するのは俺もつい最近知った話ではあるけども。
「それなら良かった。…いや、てっきり付き合うのが面倒だからそうやって言って誤魔化してるのかなって思ってたから。」
それもそうか、とも思った。『好きな人がいる』と言う割には彼女はできないし、アプローチをする様子も見られなかったから当然だろう。中西の言うことも強ち間違いではない。でも、今は違う。
「流石に誤魔化さないよ。俺もアピール頑張ってるし。」
「…へぇ!そうなのね。意外。楠木ならすぐ落とせそうだけど。」
「それが意外と手強いんでね。…頑張りますよ。」
「そ。じゃあ早く頑張ってもらわないとね。いちいち聞かれるの面倒なのよ。ホントに。」
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