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 「ノルス! スーサ! 緊急出動命令じゃ!   目的地はマップに共有しておくぞい」 人通りの乏しい小道に面するベンチで、パズルゲームに没頭していたノルス。 食い入るように操作するタブレットの画面が突然切り替わり、 代わりに白衣を着た老博士が映った。 「分かったよ、ドクター。すぐに行く」 ノルスはぶっきらぼうに言い放つと、 タブレットの電源を切って、髪を激しく掻き(むし)る。 「スーサ、聞いたか? 俺らの出番だってよ」 優雅に彼の隣でアイスコーヒーを嗜んでいたのがスーサ。 整った姿勢が絶世の美貌を際立たせ、常に周囲の視線を釘付けにする。 艶やかなブロンドを揺らしながら、彼女は凛と立ち上がった。 「行きましょう、ノルス」 「……ったく面倒(くせ)ぇな」 「まぁ、そう言わないで」 溜め息の余力でノルスも重い腰を上げた。  ノルスとスーサは袖を捲り、 手首に装着していた電動式リストバンドのブレーカーを入れた。 この瞬間から、二人は人間コイルとしての役目を全うする。 琥珀色の電流が体表を螺旋状に駆け巡ったかと思うと、 その軌跡に電気抵抗を最下限まで抑えたヒーロースーツが形成されていく。 かくしてノルスは紺碧に、スーサは真紅に身を包んだ。 一面に構築された電磁ネットワークが移動速度を倍加させる。 風を追い越すN極のノルスに、S極のスーサはぴったりくっついて離れない。 電磁石の化身は今日も世界を救いに行く。
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