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 マップに表示された目的地は街中の広場。 いつもは噴水を中心に大勢の市民で賑わう憩いの場であるのだが、 今日は見るからに取り巻く空気が違った。 悲痛な叫びの上がる芝生から、皆が一目散に逃げ惑う。 そこでは、体長が人間の倍以上にも及ぶ巨大生物が破壊の限りを尽くしていた。 「へぇ、あいつがターゲットか。何か方位磁針みてぇだな」 「そう、見た目通りの"コンパス怪人"ね」 今回彼らが仕留めるよう命じられたコンパス怪人は、 腹部に方位磁針を内蔵しており、 一度位置を把握した獲物を逃すことは誓ってない。 大胆不敵にもノルスは鼻を鳴らした。 含み笑いが揺るぎない自信を覗かせる。 「こんなふざけた奴、マグネット・レンジャーズの敵じゃねぇよ」 彼は腕を振り払い、裂断した正面の大気に磁場を展開した。 電流が創り出すその領域には、可視化された無数の磁力線が張り巡らされている。 「走るぞ、スーサ!」 「言われなくてもよ」 ノルスとスーサは全力疾走でコンパス怪人を取り囲む。 磁力を宿した彼らが移動すれば、 N極からS極へと貫通する磁力線の向きは追随して変わっていく。 矢継ぎ早にコンパス怪人へ突き刺さる磁力線。それも四方八方から。 方位磁針の頭は決まって北を向こうとするが、 強力な磁場上では対象が絶えず変動してしまう。 二人は闇雲に動き回ることで、コンパス怪人の方向感覚を狂わせたのだった。
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