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 研究所に辿り着いたノルスとスーサは、開いた口が塞がらなかった。 眼前に広がるのは、息苦しさも忘れるあまりにも凄惨な光景。 施設は無残にも半壊し、血に(まみ)れた研究員たちが数多く地に突っ伏していた。 二人は我を忘れてドクターのもとへ駆け寄る。 「ドクター! 返事をしてくれ!」 「お願い……」 皺の被さった(まぶた)がうっすらと開けられる。 微かに意識を取り戻したとは言え、危篤状態に変わりはなかった。 「おぉ、ノルスにスーサ……奴じゃ、メタルドレイクの仕業じゃ」 「そいつは今どこへ?」 小刻みに震える指が遥か上空を差す。 鋼鉄の四肢から切れ味鋭い爪を生やした怪獣が、 巻層雲の真下で銀翼をはためかせていた。 「メタルドレイクこそ最も世界を脅かしかねん。  いずれは倒さなければならないと思っていたが、  まさか向こうから襲撃してくるとは……。後は頼んだぞ」 瞼は再びゆっくり閉じられる。 ノルスは抱えていたドクターの身体が不意に軽くなった気がした。 この永い瞬きに終わりは訪れない、と二人はすぐに理解した。  完璧な沈黙をノルスが一思いに破る。 「最後の戦いだ。覚悟はいいか?」 スーサが無言で頷くと同時に、 従来の比にならない強度を誇る磁場が、泡沫(うたかた)の空間に隙間なく敷き詰められた。
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