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 一縷(いちる)の望みはおどろおどろしい鳴き声によって消え失せた。 光沢の照る金属皮膚には傷一つさえ見当たらなかったのだ。 「そんなバカなっ……!」 万策尽きたノルスは露骨に落ち着きを失う。 メタルドレイクの胴体を構成する素材は、磁石につく金属の代表例である純鉄。 苦し紛れに磁力を放出して引き寄せようとしたところ、 けたたましい咆哮が一帯に響き渡る。 鼓膜をつんざく周波数に耳を塞ぐ二人。 聴覚への激痛のみならず、彼らの背筋には季節外れの悪寒が走った。 すると、どういうわけか磁力線が忽然と数を減らしていき、 終いに空間は日常へと帰した。 聡明なスーサは絶望に直結する扉に逸早く気づいてしまったようである。 「今のはもしかして……超電導じゃない?」 俄かには信じ難い事実に、ノルスは熱くなって詰め寄る。 「簡単にその言葉を使うな!  それが本当なら、俺らには敵いやしねぇ……」 青ざめた彼の口からは不規則な吐息が漏れる。 特定の物質を臨界温度まで冷却した際に起こる"超電導"──。 電磁石の力を駆使して戦う彼らにとって、その現象は天敵に他ならない。 自ら体内に液体ヘリウムを充満させ、超電導体と化したメタルドレイクは、 外界にマイスナー効果を及ぼす。 その影響下では、いかなる磁場もことごとく打ち消されてしまうのである。
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