冷たい恋人達

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冷たい恋人達

「やっぱり、貴方と一緒にはいられない」  私は静かに首を振った。彼のことを心から愛している。だから結婚して一緒になった。二人なら、きっと幸せな未来が築けると信じて。  でも。 「貴方と一緒になったら、もっと私の魅力を分かってくれる人が現れると思った。貴方の魅力を知ってくれる人が増えると思った。でも、そんなのは甘い幻想だったんだわ」 「……そうかもしれない」  ひんやりとした風が吹く。彼の凍るような吐息と私の冷たい吐息が絡み合う。  離れた方が良い。そう感じていたのは、彼も同じだったのだろう。 「さよならしよう。一人で頑張った方が……僕達の仕事はうまくいくのかもしれない。そして、幸せな未来を掴むことも」 「そうね」  淋しい、辛い、苦しい。彼と指を絡ませ、冷たい涙を落としながら。私は彼と、最後のキスを交わしたのだった。 「さようなら」  長い長い、私達の結婚生活。この旅もこれで終わり。  どれほど胸が痛くても、切なくても。
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