4人が本棚に入れています
本棚に追加
1.霜始降 (しもはじめてふる)
10/27
なぎさ:今朝のニュースで宇都宮で霜が下りたって言ってたけど、東京はまだだよね。
わたし:都内の舗装道路は凍結しても霜は下りないかも。明け方に河原に行ってみたら?
なぎさ:寒いよぉ。早く詠みなよ。
わたし:はいはい。
霜降や君のにおいの薄まる部屋
なぎさ:未練がましいなぁ。詩としての燃焼度も薄いし。
歌唄う霜降の猫しっぽ振る
わたし:しっぽでコミュニケーションできるのは便利だなぁ。
国境の橋の砲声霜降や
なぎさ:これって霜降じゃなきゃダメなの?
わたし:動くんじゃないかってことね。冷えた橋に霜が下りるってイメージなんだけど、「冬至かな」って方がいいかもね。
なぎさ:素直だね。
わたし:ウクライナのことを詠みたかったし、俳句力がないのは自覚してるから。
昔住んでた新大塚に行って来ました。東京に来て初めて住んだ街だし、長かったから。
なぎさ:思い出があるのかな。いいのも、悪いのも。
わたし:一括りに言えばそうなる。
朝晩に秋の階降りてゆく
なぎさ:階(きざはし)って階段だよね。朝晩の通勤の行き帰りならどっちかは昇りじゃないの?
わたし:そうなんだけど、それだけ暗い気分だったってこと。新入社員なんて船底の奴隷みたいなもの。……昔の新大塚はコンクリートの打ちっ放しの汚い駅だった。エレベータもエスカレータもなかった。
なぎさ:いいよ。聞いてるから。
わたし:右足で「辞めたい」、左足で「辞めれない」ってよろよろ歩きながら、自分の部屋と駅の階段をたどってたんだ。
なぎさ:それが若いってことだよ。ってまとめていい?
ポケットの籾一粒の故郷かな
わたし:田舎の出身だったっけ?
なぎさ:どうだろ。
わたし:この間、聞いたなぎさの友だちの話をYouTube(シトロン@葛飾)にアップしたよ。小説仕立てだから、ちょっと長くて、いろんな動画をつなぎました。
なぎさ:ふふ、けっこう意外なものじゃないかな。
鱗雲の彩雲がきれい。これで満足して帰れってことだったんじゃない?
わたし:確かに。まるで北斎の遺作の龍のような雲も見れた。
秋の雲いずこの吾を見知りしか
最初のコメントを投稿しよう!