好きな色

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好きな色

 先生はいつもブルー系のネクタイを締めているが、その中でも特によく目にするのがコバルトブルー。  ネクタイの他にもハンカチやペンケースがその色だったりするのでコバルトブルーが先生の好きな色というのは確定だと思う。 「先生、これ」 「ああ、確かに預かった」  差し出したレポートを受け取った先生は軽くそれに目を通した後、チラリとこちらを見てくる。  そして、「あー」と気まずそうに唸ってからこう続けた。 「これを言うともしかしたらセクハラなのかもしれないが……いい色のワンピースとマニュキュアだな。似合っているぞ」  一瞬、マニュキュアってなんだ? と思ってしまったがネイルのことだと気がついた瞬間、胸の奥底からぶわりと喜びが吹き出す。 「あ、ありがとうございます!!」  好きな人に褒められたことが嬉しくてつい大きな声を出してしまうと、先生は驚いて目を見張る。  わたしはばつが悪くってスカートをギュッと握り視線をうろうろさせながら何とか言葉を続けた。 「先生もブルー系の色が好きなんですか? ネクタイとかよく青色のものをしてらっしゃいますよね?」  言ってから今のストーカーみたいで気持ちが悪かったかなと後悔したが、先生はにこりと笑う。 「ああ、そうだ。俺は青色が好きだ、空と海の色だからな」  そう言うだけあって先生の研究室には真っ青の空や海を閉じ込めた写真が至る所に飾られている。 「そうか、竹原も青が好きか。それはいいことだ」  満足そうにうんうんと頷く先生。  先生あのね、わたし本当はオレンジ色が好きなんですよ。
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