コーヒーブレイク

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コーヒーブレイク

 先生は椅子から立ち上がると部屋の隅にある給湯スペースへと向かう。 「コーヒーを淹れよう、座っていろ」  お言葉に甘えてわたしは部屋中央にゼミ用に置かれている大きなテーブルの下からパイプ椅子を取り出して座る。 「お前はいつもレポートの提出が早い。しかしだからといって杜撰でなく質の高い出来だし、こうして熱心に質問にくる姿勢を俺はとても感心する」  ふたり分のコーヒーカップを持ってこちらに戻ってきた先生はそれらをテーブルに置いてわたしの向かいに腰かける。 「だが解せんのはそれで何故俺のゼミに入らなかったのかということだ。俺は非常に勿体ないと思う。どうだ、今からでもゼミを変更しないか?」  先生のお誘いにわたしは曖昧な笑みを浮かべる。  先生の担当は中国史全般で、わたしは日本の近世史を専攻している。  別に中国史が嫌いなわけでもましてや先生が嫌いなわけでも絶対にない。  ただ中国史よりも日本史が好きだっただけ、ただゼミになると少人数制なのでそれが嫌だっただけ。……先生が他の学生と仲良くしている姿は見たくない、わたしのワガママだ。 「わたし、戦国武将が好きなんです。かっこいいから」  そんな馬鹿みたいだがわりと本音な言い訳をすると、先生は腑に落ちないという表情を浮かべる。 「……中国史にだってかっこいい武将は沢山いる」  先生の拗ねたような声色にキュンとしてニヤケそうになったが、コーヒーを飲んで誤魔化した。
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