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「お義父さん、ご飯食べ終わりましたか?」
「お小夜さん、悪いが、もう一本つけてくれんかの」
わたしはどうやら飲み屋の女将か従業員のようだ。
「はいはい。ちょっと待っててくださいよ」
白湯を介護用のコップに入れストローがついたフタをし、戻る。
「はいどうぞ。泉さん、その煮物、手をつけられなかったんです? お好きだったじゃないですか。一口食べてみましょうよ」
「そうじゃったか? 食べてみるとするかの」
私は煮物をスプーンに載せ義父の左手に握らせた。口に入れ数回噛んで飲み込んだのを見て話しかける。
「どうです?」
「美味いがの。もう少し濃ゆい方がなあ」
「そうですか。そちらの酢の物はいかがです? 煮物は今度いらっしゃった時には泉さん好みの味付けのを用意しますから」
「美人でやさしいお小夜さんがおるから通いがいがあるというもんだ」
「泉さんはお上手だから」
「わしはおべんちゃらは言わん」
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