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僕は1人悦に入って、手順を軽く頭の中でシュミレーションをする。こうして事前に手順を考えておくとすんなりと作業に入れると気付いてからは毎日の料理はいつも頭でのシュミレーションが一番最初にする作業手順になる。
うーん、僕と母さんの夕飯ならこんな感じで済むけれど、リンさんの夕飯となるとどうだろう。ご飯に味噌汁、メインのおかずを2つ作って、小鉢と箸休めぐらいで良いかな。
学校帰りにスーパーに寄って、その足でリンさんの所へ行こう。ちょうど明日は母さんは休みだし、外食でもしてきたら?と伝えてみよう。
最近、休日に出掛ける事も増えてきた母の姿に、誰かお付き合いしている人でもいるのかな、とぼんやりと考えていた僕は思い付いた案に満足してにっこりとした。
「ただいま。」
ドアを開けて淀んだ部屋の空気に顔を顰める。
西日が射しこむこの部屋は、朝はとても寒いし、夕方は無駄に眩しい、あまり良い方角には立っていない。
今は既に落ちた太陽の微かな光が空に残っているぐらいで、あと数分もすれば夜がやってくるだろう。
「あっ、洗濯物、洗濯物っと。」
夕刊の配達がある時は出来るだけ家に一度帰ってきて洗濯物など取り込んでから出掛けたいと思っている。でも下校時間との兼ね合いで中々それは叶わない。
学校から直接新聞販売店に向かう方が効率が良いのだ。今日はリンさんの店に寄ってきたから更に時間が無かった。ギリギリで到着した僕は夕刊の束を掴むと直ぐに自転車の籠に乗せて配達するハメになった。
荷物や制服諸々は販売店に置かせてもらって従業員の控室でチノパンにトレーナーの格好へ着替えるので問題はないにしても、今日は本当に時間ギリギリになってしまった、と反省する。
自分が遅れてしまえば、販売店のおじさんに迷惑をかける。そして何より、夕刊を楽しみにしているお客さんをガッカリさせてしまう。自分本位な態度が沢山の人を困らせる、と気付いてから僕は遅刻はもちろん欠勤も極力しないように努力してきた。
同じバイト仲間からは「お前は真面目すぎる。もう少し手を抜けって」なんて言われるけれど、元々持っている性質なのか、特に無理をしているつもりはなく目の前にある仕事をただこなしているだけなのだけれど。
どちらかと言えば融通が利かないと思っている。
高校2年生としては、地味で真面目な毎日を過ごしてはいたけれど、僕の生活は概ね満足のいく毎日だと言える。
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