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 リンさんが僕を呼んで二階への階段へと促す。そんな簡単に上がってしまっていいのだろうか。そう思う反面リンさんの暮らしている場所に興味が沸いて僕はおずおずと階段を登った。 ギシギシと軋みそうな雰囲気だった見た目とは違い木目の重厚そうな階段は僕の体重をどっしりと受け止めてくれた。 「はは、そんなに怖がらなくても壊れたりしねぇよ。その階段と大黒柱だけは立派なんだ、この家。」  先に登っていたリンさんは上から僕を見下ろしてそう言った。 「その代わり幅がちょっと狭くてなぁ。1人ずつしか登れないし、結構急だろ。降りる時も気を付けろよ。」  確かに階段はリンさんの身体の幅には合っていないように見える。リンさんは僕から食材の入った袋を階段途中で受け取りながら窮屈そうに身体の向きを変えた。渡す瞬間リンさんの体温さえ感じ取れる近さに、頬が我知らず熱くなった。  階段を登りきるとそこには摺りガラスの引き戸があって僕は「お邪魔します」と小さく声を掛けて部屋に入った。  部屋は大きな一つの部屋になっていて存在感のあるソファーと壁に掛けられた大型テレビが目を引いた。こじんまりとしたキッチンが目の端に見えて、ここがリンさんの生活空間であることを表わしていた。 「散らかっては…ないと思うんだけどな。」  ソファーの前に置かれたローテーブルに積み上げられていた雑誌を片付けながらリンさんがそう言った。雑誌なんて読まないイメージだったから少し意外に思えたけれどチラリと見えた表紙がサイクリング雑誌だったから納得した。 「荷物はその辺に置いておけ。で、今日は何を作ってくれるんだ?」  目をキラキラさせて持ってきた袋を覗き込むリンさんは子どもみたいだ。僕は言われたように荷物と上着を脱ぐとまずは手を洗おうとキッチンへ向かった。
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