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「リンさん、一つ聞きたいんだけど嫌いな物ってある?昨日聞くの忘れちゃってさ。もし今日作ろうと思ってるのがリンさんの嫌いな物だったら違うメニューにしようかと思って。」 「ん?嫌いなものか…。いや、特には無いぞ。何でも食べれる…ほぼな。」  言い淀むリンさんにもしかしたら嫌いな食材があるのかも、と思ったけれど本人が言わないなら好みじゃなくて食べられない訳ではないのだろうと僕は『リンさんは好き嫌いなし』と心のメモを取った。 「じゃすぐ作るから。お店って何時まで開けてるの?」 「そうだなぁ。普段は8時ぐらいまでは開けておいてやるんだ。急にパンクしたとかって塾帰りの学生だったりサラリーマンの連中が来る事も結構あるからな。でも閉店時間は7時になってるから今日は7時に閉める。」 「了解。料理はそんなに時間かからないと思うし、温めて料理を出す所までは僕もいるからね。」 「おいおい、何で倫太郎が帰るんだよ。今日は夕刊の配達もないんだろう?一緒に食っていけって。まぁ俺が作る訳じゃないんだけどな。」 「でもリンさんへのお礼なんだよ?」 「俺が良いって言ってるだろう。それに1人で飯食ったって楽しくないだろうが。な、一緒に食おうって。」  そう言われてしまうと僕も断りにくい。母さんにはリンさんの家に行くと言ってあるし、「なら出掛けてこようかしら」とも言っていたので携帯にメールを入れておけば事足りそうだ。 「…うん、じゃぁお言葉に甘えて。」  僕がそう言うと、リンさんは嬉しそうに笑った。今日は笑顔の大安売りみたいだ。 「何でも使ってもらって構わないからな。俺はまだ仕事あるし、何か分からない事があったら降りて来い。」  そう言ってドタドタと階段を降りていくリンさんの後ろ姿を見ながら、結局夕飯のメニューを伝え忘れた事に今さらながら気付くのだった。
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