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「ね、リンさん。良い事、教えてあげようか?」 「なんだよ…。」  少し拗ねた様子で僕に返事をするリンさんへ、内緒にしとこうと思っていたタネ明かし。 「今日さ、スーパーに行ったら茄子の大袋が大安売り。美味しいですよ、食べて食べてって僕に訴えてくるわけです。」 「ふぅん。」 「早速、僕は茄子の大袋をカゴにいれました。リンさんの好き嫌いを聞き忘れていたとはいえ、茄子が大安売りなら今日のレパートリーはもう決まったも同然だったからです。」 「はぁ?何じゃそりゃ。」  僕の話の要点が分からず、リンさんは不機嫌そうに合いの手を入れてくれる。 「ふふ。リンさん、ハンバーグ美味しかった?」 「あ、ああ。無茶苦茶旨かった。本当にあんな旨いハンバーグ初めて食べたって。」 「あのハンバーグにはね、秘密があるんだよ。」 「何だよ、秘密って。」 「ん~ニブいなぁ。あのね、ハンバーグ、すっごく柔らかかったでしょう?あれ、茄子が入っているんだ。」 「え!ほ、本当かよっ。」  リンさんは本当にびっくりしたみたいで、箸の上に乗っていたご飯がポロリと落ちた。 「本当だよ。茄子ってね肉汁を吸って美味しくなるんだ。肉のうまみ成分が茄子に沁み沁みになって外に逃がさないから柔らかくて美味しいハンバーグになったんだよ。」 「へぇ~~。あれに茄子が。ほぉぉ~。」  感心することしきりなリンさんの姿に微笑ましい気持ちになって、僕はリンさんの手の中にあるみそ汁椀を指さした。 「リンさんってハンバーグの茄子は好きでも形が残ってるのはダメなのかなぁ。茄子とミョウガのお味噌汁。ミョウガの苦味がお汁を吸った茄子と合わさると美味しいと思うんだけど。 苦手なら残してもらっても良いよ。その分僕が食べちゃうから。」  料理とは、残される事は悲しいけれど、無理に頑張って食べられるのも何か違うと感じる厄介なものでもある。僕が好きな料理でも相手が同じように美味しいと感じるかどうかはまた別だ。僕はリンさんが我慢してまで苦手な物を食べないで欲しかった。 「ちょうだいよ、その器。」  手を差し出してもリンさんは渡そうとしない。少し箸を付けてしまった事を気にしているのだろうか。そんな事気にしないでもいいのに。
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