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 リンさんはいつもそう言って僕からお金を受け取らない。リンさんにとっての正当な理由とやらで断られる事、数十回。流石に親の名前出したら受け取ってくれるかと思ったのにこれじゃいつもと変わらない。 「でもさ、僕だって困っちゃうんだよ。母さんからお金は預かってきてるし、まさか僕がネコババする訳にもいかないでしょう。」  そう言うと、リンさんは僕の顔を見てニヤリと笑った。 「ネコババしちまえば良いじゃねぇか。」 「そ、そんな事出来ないよっ。」 「倫太郎は真面目だねぇ。」  そう言って笑うリンさんは黒いTシャツを肩口までまくり上げて逞しい二の腕を晒していた。 むきっと思わず音の鳴りそうな立派な上腕二頭筋。あまりに立派だから一度リンさんに「どうやって鍛えてるの?」と聞いたら「ここはどこだ…。」とジロリと睨まれた。 自転車なんかを日常的に上げたり下げたりしてたら、そうだよね、自然とトレーニングになっちゃうよね、と思い至って誤魔化すようにへらりと笑った。 「ああ、分かった。じゃ、お前その金使って俺の晩飯を作れ。」  作業に没頭しているようだったリンさんが、さも名案という様にそう言った。 「へ?」 「俺だって料理はしない訳じゃないけどな。レパートリーが少ないんだよ。毎回同じような肉と野菜炒めとかカレーとか。あと、出来合いのもんばっかりじゃ飽きちまってなぁ。」 「ぼ、僕だってそんなにレパートリー多い訳じゃないんだよ。無理だって。」 「そんな事ないだろう。俺よか絶対多いって。」  何故か断定されて、リンさんは直も言い募った。
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