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 そう言ってまた僕に背を向けて作業を開始したリンさんの耳が赤く見えたのは気のせいじゃないと思う。そこに突っ込むとまた機嫌を損ねそうな気がして、僕はリンさんの背中を見ながら何を作ってあげようか、と頭の中で考えていた。  リンさんって何が好きなのかなぁ。嫌いなものは・・・無さそうだけど一応聞いておいた方がいいかな。 やっぱりお肉かなぁ。肉野菜炒めとカレーなんかは自分でも作るって言ってたから、その二つは止めておこう。  唐揚げ…ハンバーグにシチュー。子どもみたいだな。日持ちする物の方がいいなら煮物の方が良いのかな? つい考えに没頭してしまった僕にリンさんが声を掛ける。 「おい、倫太郎。今日は時間はいいのか。夕刊の配達は?」 「あっ、いけないっ。今日は頼まれている日だった。じゃ、リンさん僕行くね。空気入れさせてくれてありがとう。料理は…明日作りにくるからっ。」  僕は慌ててそう言って、リンさんの店を後にした。明日作る料理にリンさんが喜んでくれるといいな、と思いながら。
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