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「若い奴は途中で投げ出す事が多くてな。倫太郎はあの当時、今よりもっとチビでひょろひょろだったしな。」  とは、最近聞いた話だけれど。 僕があまりに必死に頼みこむから仕方なく雇う事にしたんだ、と当時の様子を振り返っておじさんがそう言っていた。  今では新しく入る学生のアルバイトの事は”先輩”だとして指導する事もあるし、朝刊のチラシの折り込み作業も慣れたものだ。 誰かに頼られる。それは僕にお金の事だけじゃない人としての在り方を教えてくれた。毎朝の配達は正直厳しいけれど、それでも僕にとってプラスとなる事の方が多かった。  それに、アルバイトをしていたからこそ人並みに高校へも進学出来たし、学校行事にも参加出来る。 「倫太郎がアルバイトも、家の中の事も全部やってくれるから、お母さん本当に助かってるの。ありがとう。」  そう言ってくれる母の顔を見ると、続けていて良かった、と本当に思う。 「さ、あとひと踏ん張り。夕刊は件数も少ないからちゃっちゃと済ませてしまおう。」  僕は時折欠員要員として駆り出される夕刊配達の為に自転車のペダルを力強く漕いだ。 ++  思っていたよりも夕刊の配達が早く終わり、僕は早々に家路を急いでいた。 今日は夕飯何にしようと思っていたんだっけ。冷蔵庫の中には何があった? 自転車のペダルを漕ぎながら僕は脳裏に自宅の冷蔵庫を思い浮かべる。  確か…豚肉があったな。うーん、生姜焼きでいいかな。生姜も残っていたし簡単だし。キャベツはもうそのまま千切りにしてしまおう。付け合わせだ。 みそ汁の具は…じゃがいもとインゲンにしよう。どちらもホクホクとした甘みが美味しいし、僕の好きな組み合わせっだ。 うん、小鉢は一昨日作っておいたひじきの煮物があるし。献立としてはまずまずだろう。
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