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やっぱり・・
あの期待に満ちた目は待ち人のために向けられたものだった。
でも残念なことに、来たのは見知らぬ男だったわけだ。瞬時で色も変わるわけだ。
「信じて待てば、きっと報われるんじゃないかな」
自分でも驚くほど、さらりと口をついて出た。その励ましの言葉を正面から受け止めたのか、彼女の表情は花が咲いたように明るく開いた。
「ありがとうございます。そう言っていただけると気持ちが晴れます」
キラキラとした瞳で俺を見つめてから彼女はゆっくりと立ち上がった。
「あなたのような良い人が隣に座ってくれてよかった・・じゃあ、お先に」
ちょこんとお辞儀をして、彼女はベンチから遠のいていった。
残された俺もゆっくりと腰を上げた。
良い人。その言葉を喜ぶ裏側で、本心を念仏のように唱えた。
・・待ち人よ来るな。俺が代わりを務めてやるから・・
そして無事に良い人を演じられたことに安どするのだった。
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