11人が本棚に入れています
本棚に追加
私は一人になりたくない。
「昨日拓海くんテレビ出てたの見た?」
「見た見た! 新曲めっちゃよかった!」
三人組アイドルグループLOOPの一人、篠原拓海くん。友達の「よこ」こと横山里帆と、「やま」こと山口千咲の推しメンだ。
「うめは? 昨日見た?」
「う、うん、見たよ。かっこよかったね」
「だよね!」
私は梅原風花、「うめ」と呼ばれている。
よことやまは拓海くんを推している。二人が拓海くんのことで話が盛り上がるから、なんとなく私も拓海くんが好きなフリをしている。
二人が盛り上がりすぎて、話についていけない。私はいつも置いてけぼりだ。適当に相槌を打って、とりあえず笑っている。
よことやまが並んで歩く廊下を、私も遅れないようについて歩く。二人の会話にあたかも一緒に盛り上がってるかのように演じる。浮いてる自分に気付きたくない。
「あ、そういえば昨日部長がね」
今度は部活の話。よことやまは二人とも吹奏楽部。私は書道部。部活の話になったら、私はもう何も言えない。「へぇ〜」とか「ふ〜ん」「そうなんだ」って一応話に入ってるフリ。
よことやまは笑っている。私はいつも二人の笑顔を見て、笑ったフリをしている。毎日毎日、二人に話を合わせて、一緒にいる。
最初のコメントを投稿しよう!