留学者たちの交流Ⅰ

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       ―Ⅸ.週末の相談Ⅶ 次の週末Ⅲ―    ウェルファルミナ・リーデは、正式名称をハイデル騎士団独身者用宿舎と言う。 実際には、彩石判定師及びハイデル騎士団支援隊の未成年者含む独身者も居住するが、すべてを正直に並べると長いので、いっそのこと、ウェルファルミナ・リーデに変更しようかという話になっているところだ。 届け出から始まって、屋敷の運用も、一部、既に行われているが、そういう事情なら、手続き完了早々の変更でも、認められそうだった。 そんな屋敷の、改修済みの離れでは、帰宅前に、ちょっとだけと、茶の時間が持たれていた。 リシェルは、初めて対面したが、舞姫と(うた)われたリィナ・レジェックのことは、もちろん承知している。 「えー、テオの連れ合いが伝説の舞姫とはねえ、よくも隠し(おお)せたもんだ」 「ふふふ、あの人ったら」 最近、ますます若々しくなったと噂されるリィナは、軽やかに笑う。 若々しくても、年齢相応の(つや)はあって、今の舞台を見てみたいなと思うリシェル…ばかりでない人々が()た。 「それで、今週末のことなんだけどね」 少女たちの悩みを聞いて、それならと、リィナが声を上げる。 「我が家で、お泊まりでは、いかがでしょうか。いつものように、半の日に。ボルドには申し訳ないけれど、テオと2人で、イエヤ邸で預かっていただければ、少女たちを迎えられると思います。特に王女殿下の、お二方には、その方がよろしいかと」 「そうだねえ…、もう、そんな年齢だねえ…」 ミナは、ちょっとがっかりしているし、デュッカはいつもの無表情ではなく、明らかに不満そうだった。 リシェルは、デュッカの変わり(よう)に、思わず吹き出してしまった。 「ん?どうか?」 「いや、なんでもないよ。しかし、楽しそうだねえ、女子夜会」 「あら、リシェルも参加します?」 打てば響くようにリィナが返し、思わず驚いたが、リシェルはありがたく受ける。 話がまとまると、ぽつりと、ミナが言う。 「いいなあ、女子夜会」 「お前は許さん」 こちらはこちらで、待ってましたと、(かぶ)せ気味に答えるデュッカだ。 ちらっと見るが、リシェルは、あんまり触れたくない。 「はあ。分かりました」 そう言いながら、何か考えるようなミナが気になったが、デュッカも同じことを気にしているように、彼女を、じいーっと、眺めている。 鬱陶しいと突っ込みたくなる。 我慢、我慢。 しかし、我慢の方が続かなくなりそうだと、リシェルは遠くを見る目になった。 「それで、半の日ですけれど、女の子たちは全員、うちで構いませんわね?いつもデュッカが作ってくれる、世代別の空間、リシェルにも作れますか?」 「え、なんのこと」 なんか、雲行きが怪しいぞと思っているうち、ミナが確約した。 「それなら、土と風の力で、作れるようにさせます。リシェル、今日から、特訓ね」 「へ?」 「宿舎は近いから、ホールト、どうせなら、付き合って。ミムシュテルトとキルシテンレルクは、適当に」 「うん、分かった」 「付き合うよー」 そんなで、10代前半までの少年たちはイエヤ邸に、10代後半からの青少年はセスティオ邸に宿泊することが決まった。 「半の日と藁(こう)の()の2泊にしましょう。短期宿泊の要領も考えられるといいですし」 そういうことで話が(まと)まり、リシェルは引き続き、この場で異能の修練だ。 物体を作り出すので、体練(たいれん)用の庭に出て、始める。 「リシェルは、ついでに、サイジャクでの修練も絡めて作りましょう。一定量ずつ、力を出しながら、全く同じ存在を作り出します。一定の時間を掛けて、調子よく、ぽぽぽぽぽ、と続けてもいいし、ぽーんぽーんぽーんて作ってもいい。最後に繋げて、(なら)しますよ」 手本は、デュッカが作ってくれた。 最初は、ぽぽぽぽぽ、と、絶え間なく作り出し、同時に(なら)してもいるもので、間に(かぜ)を含んだ(つち)の物体、(よう)は、風船を作り出し、徐々に大きく、寝具なども形を整えていった。 「昔から器用だと思ってたけど、こんなことまでするのか!」 「ミナを休めるのには、ちょうどいい」 どこまでも、行動の中心は、そこにあるらしい。 リシェルは、もはや、突っ込む気が失せた。 次にデュッカが作ったのは、固まりが大きめの風船を繋げて、最後に風の通り道を繋げたものだ。 ぽーん、と作りだしたひとつの風船に、すぐさま、ぽーんと作りだした風船を接着させ、これを大量に接着させて大きな(かたまり)にした(あと)、内側の風船の壁を良いように取り払い、外側だけを残して、内側には、風だけを残した。 「こんな感じです。枕ぐらいなら、ホールトにも、いくつか作れるんじゃないかな。よかったら、試してみて。まあ、ホールトは、普通の修練をする方が、身に着くと思うんだけど、色んな手法を知ってると、土の者は特に、便利だよ」 ホールトは、その用途の広がりに気付いて、興奮を感じた。 「う!うん!やってみたい!」 「わあ、ホールト。すぐ作る?今作る?」 「作って見せて」 親しい獣たちに背中を押されて、見たまま、感じたままを作り出そうとする。 「あ、待って。ホールトは風の力が強いわけじゃないから、土の力で薄い膜を作って、土と風と水を適度に混ぜた柔らかい物を詰めたら、中には人は(はい)れないけど、枕とか、敷綿(しきわた)とか、掛け綿(わた)とかの寝具にはなるんじゃないかな。敷綿(しきわた)は土を多めで、水は土を(ほぐ)す程度、風は微調整って感じ。掛け綿(わた)の方は、ちょっとだけ水気を含んで、土に柔らかさを出して、多めの風を間に行き渡らせるの。思い描けそう?」 ホールトは、自身の知識の寝具の様子と、ミナの言葉の誘導が重なって、(えが)けたものに、確信を持った。 「うん、やってみる!」 こちらはこちらで、寝具作りが始まって、リシェルも、負けていられない。 リィナの助言を受けたりして、仲良くもなり、リシェルにとって、とても濃い内容の一日となった。
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