ニトとホトニルの小さな冒険

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       ―Ⅱ.小さな歩み―    2人を囲う輪は、持っていなくても、下に落ちない。 ニトとホトニルは、最初は片手を握り合い、輪を握っていたけれど、すぐに疲れてきて、輪を放し、握り合っていた手も、軽く引っ掛けるだけになっていた。 それはそうと、部屋の外に出たとき、まず彼らに気付いたのは、使用人たちだった。 2頭に増えた彩石ボゥと、輪の中に立つ2人を見て、何らかの事情を察した。 どうしましょうと、視線の集まる()(れい)ウィスコットは、穏やかな笑みを浮かべて、2人に歩み寄り、少し離れた場所に、膝を曲げた。 「ニト様、ホトニル様、お出掛けですか?よければ、ご一緒しましょうか?」 2人は、顔を見合わせた。 それから、ニトが言った。 「イエヤていにいく。おつかいなの。おつかいは、ふたりでいくの?」 ちょっと自信が無い、難しい問題に直面させたようだった。 ウィスコットは、成長のための一歩なのだと理解して、頷いた。 「おつかいでしたか。それは、大人が、ご一緒するわけにはいきませんね?それでは、どうぞ。玄関から、お()になってください。さあ」 誘導になったが、促された2人は、無事に緑嵐騎士旗下(きか)単身者用宿舎、緑葉の雫を出ることに成功した。 「ウィ、ウィスコットさん、こっそりあとを付けてはだめですかね!?」 共通する思いを抱える使用人たちに、穏やかで、凄味のある笑みをウィスコットは見せた。 「さあ、仕事は山ほどあります。行きなさい」 部下たちを追い払ってから、それとなく窓の外を見た。 幼子(おさなご)2人は、ちょうど表で出会った馬たちと、お喋りをすると、一緒に、敷地内の道を北に向けて進み始めた。 あの馬たちは、ウィスコットと比べるまでもなく、長生きだけれど、目を瞑って、微笑んだ。 小さな冒険は、ああして、仲間を増やしていくことになるかもしれないなと、その楽しさを想像するウィスコットだった。
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