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―Ⅲ.冒険の仲間―
玄関を出ると、ちょうど、馬のシュリンクが来たところだった。
本来の姿よりも小さくなっていたシュリンクは、外見では、ほかの透虹石の馬と見分けが付かないのだが、特に気にするふうでもなく、シュリンクだと名乗った。
「お前たち、こんな所で、何をしている。どこかへ行くのか。どれ、供をしてやろう」
さっさと決めて、どこへ行くのかと聞く。
「イエヤてい」
「ふん?じゃあ、あっちだな。地図があるのか。ほれ、今、お前たちは、この点だろう。この道の先が、近道だ」
隣家なので、近道も無い、などということはない。
イエヤ邸も、この宿舎の敷地も、とんでもない広さなので、一旦、敷地の外に出て、公道を歩き、隣の敷地に入る、などという行程を経ると、確実に、幼子の足では、大変な距離になってしまうのだ。
そのため、北隣のイエヤ邸に行くのなら、北門から出て、隣家の南門から入るのがよい。
これまで、南門から、こちらの敷地には入れなかったのだが、緑嵐騎士ジュールズ・デボアの、ごり押しによって、新たに通用門が設置された。
「やあ、シュリンク。また会ったな。おや、そこな子供は、どうした。迷い子か」
黄色い足で、ぺたぺたと歩くのは、源始の人鳥のひとつ、彼自身の名はユンベルステックァだ。
ニトもホトニルも、子守りとしての彩石動物で見たことのある姿なので、特に驚きは無い。
「ほう。俺の姿を見て、恐れぬとは、先が楽しみな子らだ」
「よせ、よせ、自分の容姿を特別に思うな。この子らは、子守りで同じような姿を多く見ているのだ。がっかりするぞ」
「むぅ!今、まさに!がっかりした!シュリンクめ!」
「けんか?だめよ?」
ニトの言葉に、ユンベルステックァは、小さな目を大きくして、そして楽しそうに笑った。
「くくく。先の楽しみな子らよ。どれ、今しばらく、供をしてやろう」
なぜかそんなことになって、2人と2頭と2体の一行は、北へ進む。
その間にも、小さな人の子と、図らずも行列となった一行に、なんとなく付いてくる、言葉を話す獣たち。
南門まで迎えに来ていた、イエヤ邸の家令グィネス・テトラと、鷦のムーリスファイが、仰天するのは、もう少し、あとのこと。
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