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「――ますので、ぜひ覗いてみて下さい」  体育館の壇上にて、生徒数人が現れては退いていく。僕はある人の登場を、今か今かと子供のように待っていた。  この浅水高校は部活動が盛んで、必ずどこかの部に所属する決まりがある。ゆえに、入学三日目にして部活紹介の時間が設けられていた。  幾つかの紹介が終わり、新たな一行が現れる。堂々とした佇まいの彼らは、他とは一線を引いた輝きを持っていた。心が騒ぎたつ。僕の瞳は、一際煌めきを帯びた少女へと向いた。小柄で細身。艶のある長い黒髪。確りと着こなされた制服――。 「私たち演劇部です! 今日は魅力をお伝えするために、短い劇をします!」  響く声が鼓膜を震わせる。直接脳に染み渡る感覚は、心の中まで温かくした。
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