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 緊張と期待で体が機械化する。そんなぎこちない歩みでも目的地には着くようで、あっさり部室に到着した。  教室としては使われていない部屋らしく、機材などが大胆に置かれていた。  見学の生徒と部員が入り乱れ、雑踏にいる気分を味わう。辺りを軽く見回すと、対角線上――教室の隅に先輩を見つけた。台本片手に数人と会話している。距離をもどかしく思ったが、人混みを突き抜ける勇気はなかった。  一方的に見つめていると、不意に目があった。なぜか一瞬反らされかけたが、すぐに戻される。それから微笑まれた。水位が急上昇するかのように、体内から熱が上ってくる。憧れとの接触に、心臓が騒いだ。    偶然知ったことだが、先輩の名字は花咲というらしい。溌剌とした人柄に、よく合う名だと擽ったくなった。  結局、部室にて先輩に近づく機会はなかった。再び先輩と会ったのは、部活終了から一時間後のことだった。
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