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Ⅴとノアのハロウィンパーティー
「ハロウィンだ!」
「よかったですね。あ、紅茶冷めちゃう」
「ちょっと待て!!!」
高らかに宣言したⅤを見る事すらなく、肩まで伸びた艶やかな黒髪をさらりと流して紅茶を楽しんでいるノアに、Ⅴがだんっと勢いよくテーブルを叩いてツッコミを入れる。
「ちょっと待てノア、ハロウィンってもっとこう、てんしょんぶちあがって転げまわったり窓を突き破ったりするもんじゃないのかい!? ノアにとっては紅茶が冷めることのほうが大事なのかい!?」
Ⅴがぼさぼさの頭を抱えて転げまわりながら叫ぶが、ノアは全く動じない。鈴の音を鳴らすような綺麗な声で言う。
「ああ、それで博士の部屋の窓割れてたんですね。じゃあこの紙にサインお願いします」
「ん? ええ、なんださいんが欲しいのかい? それぐらい、ノアにだったらいくらでも書……ってこれ弁償金の要求書!」
「何の話ですか、天才な博士にサイン貰おうと思ったらたまたま裏紙がこれしかなかっただけですよ? あ、サインはここの欄に書いて下さいね」
「ノアの嘘つきー! 嘘つきはケイドロの始まりだぞ!」
「なんか知りませんけど、今日の博士はボケのレベル低いですね。ハロウィンなんですから、嘘つきは……えーっと、嘘つきは、嘘つきは、んー……」
Ⅴと違って常識的思考のノアは、なかなかボケを思いつかない。形のいい顎にほっそりした指先を当ててしばらく考え込んだ後、
「あ、そうそう、十一月の始まりくらいのことは言ってほしいです」
「ノアだってハロウィン関係ないじゃないか!」
「十月三十一日だから十一月の始まりなんですよ」
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