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第1話 夢落ち
なんだか頭が重い。酒を飲んだ覚えもないのにどうしたことか。それに寝てる場所がいつもと違う気がする。
僕はベッドなんて高級品を持っていない。寝床は一年中寝袋だ。これさえあれば、いざというとき野宿できる。夏冬兼用だから便利なんだよ。
「えっ!?」
それなのに、僕はふかふか? のベッドの上にいる。そしてあろうことか、もう一人誰かいる。
「ああ、動かないで……」
裸の男が僕の上に覆いかぶさっていた。さっきのビジネスマン? いや、こんな人だったかな。明るい髪色と彫りの深い顔立ちは外人かハーフみたいだ。
どこかで見た俳優のよう。それに随分鍛えているのか腕も胸も筋肉質……いや、そんなもの鑑賞してる場合じゃない。
「こ、ここはどこっ! あんた何してんだよっ!」
思い切り腕を突き立て抵抗する。だが、意外にも彼の体は重くびくともしない。
「あれ? だって俺、君を買ったんだよ? 好きにしていいはずだ」
そいつは余裕の笑みを浮かべ僕にのたまった。そして僕の首筋に唇を這わし始める。全身総毛だつ。
「うわあ、やめろっ! そんなはずはない。僕は……」
「祖母の教えで体は売らない。だろ?」
「そ、そうだよ」
なんで知ってるんだ? 僕はそう言いながら、買われたのか? そんな馬鹿な! 男は体を起こし、サイドテーブルから何やら取り出した。
「ほら、5万」
安い! いや、そういうわけじゃなく。なんでだよ。おかしい。僕は断ったはずだ。
「あ、何してる!?」
僕のお尻のあたりに男はぬるぬるしたものを塗りだした。気持ち悪い。
「なにって……そりゃそのまま突っ込んでもいいけど……」
ひいっ! 僕は声も出せず息を呑む。
「やめてくれー!」
僕は精いっぱい力を込めて男を振るい落とそうとする。なのに全然力が出ないよっ。
「助けて!」
そう叫んだ時、ようやく目が覚めた。
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