色んなあなた

ウザい

　夕飯の支度をしながらスマホを眺める母さん。

「律斗(りつと)！課題は終わってるの!?」

　急に怒り口調が飛んできてこっちまでイラッとする。

「は？終わってるし！うるせぇな」

　こっち、見えてたのかよ。
　文句を言いつつ俺もスマホゲームに意識を戻した。だが、

「はぁ!?その態度は何!?」

　キレてくるとかウザ過ぎる。
　無視していると俺の目の前に母さんが立っていた。
　だが、反応なんてしたくなくて俺は気づかないフリをする。

「いつからそんな反抗的な態度取るようになったわけ!?あのねぇ!!」

　グチグチとうるさいのが始まって俺は立ち上がってリビングを出た。
　いつからも何も……中二の男がいつまでも母さんの言うことを大人しく聞いてると思うなよ？
　荒々しくドアを閉めてドスドスと音を立てて階段を上る。
　ちょうどインターホンが鳴ってまた母さんのコロッと変わった声が聞こえた。
　リビングから出てきて、階段の途中に居た俺に気づいて目を吊り上げつつパッと顔を変えて玄関のドアを開ける。

「こんばんはー！あ、お義母さん！ありがとうございます！これみんな大好きで！はい！」

　さっきまでの凄い顔はどこにやったんだ？と聞いてやりたい。
　よくもまぁ、あんな瞬間的に顔も声も変わるもんだ。

「律斗ですか？」

　聞こえてきた声で俺は慌てて階段を駆け上がった。