ウザい

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ウザい

「あの俳優さん、めちゃくちゃ演技上手よねぇ!」  そりゃ当然だろう。それが仕事なんだ。  天才も居るかもしれないが……勉強して、稽古をして、経験を積んで……演じることで食っている人たちなんだ。  むしろ、俺からしたら……電話が鳴って、 「はいはい!」  母さんがパタパタと走っていって受話器を掴む。 「はい!」  その声がワントーン上がってソファーで持っていたスマホからそっちに目を向けると、母さんはなぜか着ていたカーディガンの前を合わせてから受話器を両手で持った。 「あらぁ!お久しぶりです!お元気ですかぁ?はい!うちもお陰様でぇ……」  さっきまで座椅子に体を預けてみかんを食べていた人間とは思えないはっきりした声。  どこからあの声を出すんだ?  思いながら俺はテレビに目を向けて、チャンネルを変えた。  一瞬で人が変わったような母さんの方が凄いと思う。
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