妹に婚約者を奪われた日に、神社の狐から恋人役を演じてほしいと頼まれました。

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 人型のようで人間じゃないふしぎな何かが、銀と瑞穂へ話しかけてきた。  すると銀は瑞穂を抱き寄せて、髪に口づける。 (い、いきなり!? 平常心、平常心……)  瑞穂は動揺を必死に隠して、黙ってにこにことする。 「あぁ、そうだ。べっぴんさんだろ。だから縁談は要らねぇ」 『そうかい、そうかい。めでたいねぇ。お嬢さん、あんた、歌は得意かい』 「歌は苦手ですが、三味線なら」 『ほぅ。よかったら一曲弾いてくれないかい』 「すみません。三味線は持ってきていないので……」 「三味線ならあるぞ」  ぽんっ!  銀の手には、いつの間にか三味線があった。 「(ばち)もある」 「なんと用意のいい」  ぽろん♪  瑞穂は三味線を弾き始めた。  すると周りには神々が集まってきて、音楽に合わせて踊り出す。  ♪  ♪ ♪  ♪ ♪ ♪ (楽しい……! 三味線を弾いていてこんなに楽しいのは久しぶり……)  いつからだったのか。  何をしても褒められることはなく、諦めてしまったのは。  それでも続けてきたことを、瑞穂は心から嬉しく思った。  ♪ ♪ ♪  ♪ ♪  ♪  どんどん音楽は明るく速くなっていく。  一曲終わると拍手喝采!  瑞穂は神々に囲まれもてはやされた。 『なんてすばらしい演奏なんだ!』 『もっと聴きたいですねぇ』 『すてきなお嬢さん。一杯どうぞ』
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