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遭難
「……、……そち、らの、現在、の、座、標を、送っ、て……くれ。繰り、返、す……」
不明瞭な通信から、かろうじて聞こえる男性の声。俺は目の前にある通信装置を口汚く罵りながら一度大きく叩いた。すると不明瞭だった通信が元に戻る。先程の通信先の男性が命令を繰り返している。
「……アーフ113。こちらアーフゼロ。捜索救難信号を受信した。そちらの現在の座標を送ってくれ」
俺は思わず、いつの時代のローテクかとツッコミを入れようかと思ったが止めた。益がないからだ。それよりも今はやるべき事がある。
「アーフゼロ。こちらアーフ113。現在位置は惑星パラザの北半球。エネア大地に広がるオックの森の北北西付近に不時着した。座標を送るので救援を頼む」
するとアーフゼロから「了解した。確認するので少し待ってくれ」と返答があった。その間に体調はどうだと問われた。俺は「体調は問題ない」と答える。実際に怪我はしていない。
しかし宇宙服の方にダメージがあって、酸素ボンベなど色々と壊れている。そして船も壊れている。
その辺の会話を交わしていると確認を終えたのだろう。アーフゼロから指示が出た。
「アーフゼロより、アーフ113。送られてきた座標付近は森が深すぎて救助が出来ない。これから送る座標まで移動してほしい」
これに俺は驚いた。
「アーフ113より、アーフゼロ。おいおい。宇宙服が壊れているって言っただろ。生身で歩けって言っているのか? それも座標をみる限り順調に行っても三日はかかるぞ? 水も食料もないのにどうすんだ!」
「アーフゼロより、アーフ113。あー、言い難いんだが。こちらに届いた船体記録では既に船の損傷によって外気が入り込んでいる」
「…………」
「幸いにも大気の組成は地球とほとんど同じだ」
「…………」
「その、なんだ。水と食料については検査キットで、ある程度は調べることが可能だ」
「…………」
「まぁ無事に帰れたら、検査が待ってる。気休めにもならんが……頑張れ」
「……アーフ113。了解した」
こうして俺は救助を行える場所まで移動することとなった。
さて。そもそも何で俺がこんな事態に陥っているのかを話そう。
惑星パラザは、現在進行系で調査が行われている惑星で、まだまだ分からないことだらけの星だ。
俺たちは、そんな惑星を移住や開拓するために事前調査を行っている。
その過程で機体に飛翔物が打つかって故障。墜落して、この有様だ。
「ったく。たぶん塵か何かだと思うが、いい迷惑だぜ」
おかげで未知の森を移動しないといけない。
しかも徒歩で。最悪だ。
そんな悲壮な思いを胸に抱いていると、再び通信が入った。
「アーフ113。こちらアーフゼロ。聞こえるか?」
「アーフゼロ。こちらアーフ113。あぁ聞こえてるよ。どうしたんだ? ってこのやり取り面倒だな」
すると通信の先で笑い声。
「はは。そうだな。普通に話すか。まぁなんだ。あんたの彼女が話がしたいとさ。これから少しの間、プライベート通信に切り替える。ごゆっくり」
すると、チャンネルが切り替わる音の後で女性の声が耳に入ってきた。
「ジェイク?」
「あぁ。メイジャンか?」
「えぇそう。あぁジェイク! 無事? 怪我は無い?」
「あぁ。幸いなことにな」
「そう。船外には出た?」
「いいや。まだ出ていない。これから荷物を持って移動を開始するところだ」
「そう。気をつけてね。危険な生物がいるかもしれないもの」
「あぁ分かったよ。気をつける」
心配をするメイジャンとその後も話をしていたが、途中で通信士から「いいかげんにしろ」と呆れ混じりに言われてしまった。
良いじゃないか。少しぐらいイチャイチャしたって……
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