第一話 やっと会えたね

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「え……?」  妖術師は目を潤ませ、今にも涙が零れそうだ。俺は首を傾げた。やっと会えたとは一体。言い方からして、以前俺とこの妖術師は会ったことがあるのだろうか。 「僕のこと覚えてない……?」  不安そうに眉尻を下げる妖術師だが、まったく見覚えがない。俺は最近の記憶ならあるが、ある程度昔となると全然覚えていないのだ。悪い、妖術師。 「あ……うん、ごめんな。俺、あんまり前のこと覚えてなくて。」  すると妖術師の目から、涙が一筋流れ落ちた。まずい。これでは契約してもらえないかもしれない。知らない奴だけど知っていると言ったほうがよかったのだろうか。でも思い出話をされてもついていけなさそうだし。おろおろしていると、妖術師は指で頬を擦った。そして微笑む。 「いいんだ。というか、それなら辻褄も合うし。」 「そ、そうか。」  助かった。辻褄が合うとはどういうことなのかわからないが、このまま帰されるということはなさそうだ。咳払いして仕切り直す。 「それで……俺、あっ、我に何を望む?」  妖術師はふふっと笑った。 「僕と契約してくれる?大妖怪さん。」 「契約……!」  小躍りしたいくらいだったが気持ちを抑えて、控え目に振舞う。妖術師に舐められてはいけない。しかし、ついに俺も契約ができるのだ。 「嬉しいの?今まで契約したことなかったの?」 「馬鹿を言うな。契約くらいしたことある。」  もちろんしたことはない。俺は妖術師に呼び出されても、最終的には帰されてしまう。呼び出された部屋の内装を見たり、妖術師と世間話をしたりするだけだ。妖術師はまた笑って人差し指を立てた。
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