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おそるおそる目を開ける。これが人間と妖怪の妖力交換の仕方?そう思った瞬間、唇を塞がれた。ぬるく濡れた舌が、口腔内に差し込まれる。思考は停止し再び瞼を閉じると、ただ舌と舌がねっとりと絡み合う感触と、唾液が立てる僅かな音だけを知覚する。俺は呼吸ができずにくぐもった声を上げた。
「んんっ……。」
咥内を蹂躙していた生き物がすっと退散していく。潜っていた川から久しぶりに頭を出したときのように、勢いよく空気を吸い込んだ。はぁはぁと一生懸命息を整えていると、宗司郎は心配そうに覗き込んできた。
「苦しかった?キスするの初めて?」
「はぁ……ぁ……キス?これがその……妖力を渡すってこと?」
「契約したことあるんじゃなかったの。」
宗司郎はまた俺の耳を触りだした。ぴくぴくと耳が反応し、腰の奥がぞくりと浮くような感覚がある。
「あ、あるけど……。」
視線を左に逸らしながら呟いたが、そろそろ嘘をつきとおすのも限界な気がする。だって、こんなことをするなんて知らなかった。宗司郎はふっと笑う。
「これだけでももらえるけど、せっかくだからもうちょっと頂戴。」
「もうちょっと?」
不安になって見上げると、宗司郎は耳を触っていた右手を動かし俺の肩に添えた。その手はするすると臍の下までなぞる。くすぐったくて身を捩ったが、服の裾から宗司郎の手が侵入してきた。
「わっ……!」
肌を直に触れられ、思わず声を上げた。これ以上何をするというのだ。
「壱葉、すごく敏感だね。」
「だって人間の姿は久しぶりだし……。」
「痛かったりしたらすぐ言うんだよ。」
「わ、わかった。」
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