第一話 やっと会えたね

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 おそるおそる目を開ける。これが人間と妖怪の妖力交換の仕方?そう思った瞬間、唇を塞がれた。ぬるく濡れた舌が、口腔内に差し込まれる。思考は停止し再び瞼を閉じると、ただ舌と舌がねっとりと絡み合う感触と、唾液が立てる僅かな音だけを知覚する。俺は呼吸ができずにくぐもった声を上げた。 「んんっ……。」  咥内を蹂躙していた生き物がすっと退散していく。潜っていた川から久しぶりに頭を出したときのように、勢いよく空気を吸い込んだ。はぁはぁと一生懸命息を整えていると、宗司郎は心配そうに覗き込んできた。 「苦しかった?キスするの初めて?」 「はぁ……ぁ……キス?これがその……妖力を渡すってこと?」 「契約したことあるんじゃなかったの。」  宗司郎はまた俺の耳を触りだした。ぴくぴくと耳が反応し、腰の奥がぞくりと浮くような感覚がある。 「あ、あるけど……。」  視線を左に逸らしながら呟いたが、そろそろ嘘をつきとおすのも限界な気がする。だって、こんなことをするなんて知らなかった。宗司郎はふっと笑う。 「これだけでももらえるけど、せっかくだからもうちょっと頂戴。」 「もうちょっと?」  不安になって見上げると、宗司郎は耳を触っていた右手を動かし俺の肩に添えた。その手はするすると臍の下までなぞる。くすぐったくて身を捩ったが、服の裾から宗司郎の手が侵入してきた。 「わっ……!」  肌を直に触れられ、思わず声を上げた。これ以上何をするというのだ。 「壱葉、すごく敏感だね。」 「だって人間の姿は久しぶりだし……。」 「痛かったりしたらすぐ言うんだよ。」 「わ、わかった。」
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